水谷の心はザワついていた。



状況はそれ程切羽詰ったものだったのだ。

彼はどうしたものか思案に暮れていた。

悩んだ末、彼の下した結論は、郷に入らば郷に従え。

水谷は海工で一番上位のグループへ自ら志願した。

全ては美留久の為、イザという時に美留久を守る為。


だが、彼の下した結論は思慮が浅すぎた。

悪で悪を制することなどできる筈もない。

悪に染まる事ほど容易なことはない。

直ぐに彼はグループへ取り込まれ、その序列の最後尾に付くことになった。

下っ端の彼はわが身の保身がやっとで、とても他人のことまで世話を焼くことなどできそうになかった。


水谷が一人抜け、美留久と聖夜は完全に孤立した。