「一郷、お前やばいぞ」



そんな言葉を水谷が美留久にかけたのは、秋も深まる十一月のことだった。


「そろそろ三年から声が掛かりそうだ。それも聖夜じゃなく、お前に」

「なんであたしなの?」

「そりゃ、あんだけ目立てば目障りだろ、普通に」

「なんで?

あたしは聖夜を守ってるだけだよ。

喧嘩なんかしたら、聖夜の身体が壊れちゃう。あんただって分かってるでしょ」


「俺は分かっても、あいつ等にはそんな理屈は通用しない。

強いものが全てを制す。

それが男の世界なんだ」


「ばっかみたい」


美留久は水谷の忠告など耳を貸す気はなかった。

いや、耳を貸す余裕などなかったのだ。

さすがに三年ともなれば身体つきも大人に近い。

小柄な美留久太刀打ちできるか不安だった。