「何であんたがここにいるのよ?」
入学式の日、校門で佇む水谷を見て美留久は容赦なく毒舌を吐いた。
「俺も相当馬鹿だったってことだな」
水谷は美留久の隣りを歩く聖夜に声をかけた。
「おう、古谷、これからも宜しくな」
聖夜の口元が、少しだけ緩んだ。
それに気付いたのは、多分、水谷ひとり。
聖夜にだって、今のこの状況が喜ばしいものである筈がなかった。
勉強はこれから頑張ればなんとかなるだろう。
だか、歩き始めたこの人生は、やはり何処かが狂っていた。
言い知れぬ不安
不透明な未来
晴れぬ気持ち
重い身体
全ての闇を背負い、それでも歩いて行かなくてはならない。
聖夜にとっても、そこに水谷が加わることが、一つの救いに思えたのだ。



