「でも……、セイはまだ走ることだってできないし、勉強だって大分遅れてる」
「それはだな……、お前が心配することじゃない。
周りの大人が心配すりゃあいいことだ。
一郷、お前は古谷の母親になりてぇのか?」
「セイのママン?
代わりになれるものなら、なりたいよ」
美留久は遠い目をしてそう言った。
聖夜の亡くなった母親、ジョセフィーヌの面影を思い浮かべて美留久は溜息をついた。
どう頑張っても、あんな素敵なママンにはなれそうにない。
「俺だったら、ゴメンだな……」
水谷は美留久の真意を測りかねていた。
彼は、美留久が聖夜のことを、てっきり好きなのだと思っていたのだ。
まさかそれが母性本能からくる同情だったとは?!
彼は美留久のことが好きだった。
だからこそ、不自然な二人の関係を見ているのが辛かったのだ。