<バタン!>
大きな音を立ててドアが閉まった。
「セイヤ、帰ったのか?」
鬱々とした感情を内に秘めた聖夜の行動は、日増しに危ういものに感じられた。
樹はそんな聖夜を、苦々しい思いで眺めていた。
病院を退院した聖夜は、一見、事故から回復したように見えた。
幼い容貌は成長した青年へと姿を変え、事故の形跡は顔に走る一筋の傷跡を残すのみとなった。
だが、見えない部分の身体に刻まれた無数の傷跡と同じように、聖夜の心には大きな傷が深く残されていたのだ。
<生き残ったことへの罪悪感>
生きている限り消せない、その鬱々とした黒い影の存在を、まだ誰もはっきりとは認識してはいなかった。



