「俺は家族だ!」


樹は通りを封鎖している警察官に詰め寄り、事故現場の中へと無理矢理踏み入った。


「生存者は!?」


樹の事務的な口調に、


「男の子が一人」


事故処理にあたっていた警察官が口を滑らせた。


「両親は!?」


「あの車を見ろよ、跡形もない。即死だよ。男の子が助かったのは奇跡だ。信号無視に脇見運転。酷いもんだ」



「何を言ってる! これは、人為的な事故だ!」



樹の声に驚いて顔を上げた警察官。

そして樹もまた、後ろから肩をつかまれた。



「君、ここは部外者は立ち入り禁止の筈だが……」



「わかっています。でも、僕は彼らの、この事故の被害者の肉親です。大切なことなんです。どうか話を聞いてください」


樹の真っ直ぐな言葉は、肩をつかんだ刑事の心に真っ直ぐに届いたようだった。


「いいだろう。納得がいくように話して貰おうか……」


その落ち着いた声に導かれ、樹は彼のあとに続いて歩きだした。