目を閉じると、

暗闇の中に、何故か笑う美留久の笑顔が見えた。



(なあぁんだ、目を閉じれば見えるんだ)



聖夜はなんだか不思議な気がした。

目を開けている方が真っ暗闇だなんて、可笑しいと思った。

意識が目覚めてさえいれば、暗闇なんて怖くない。

目を閉じれば、いつでも美留久に会えるんだから。


聖夜には、自分が生きているという実感よりも、美留久の笑顔が見れたことの方がずっと嬉しかったのだ。


どうやら、目を開けても何も見えないのは、顔中に巻かれた包帯のせいらしかった。

いや、もしかしたら、目、自体も失明しているのかもしれない。


最後に見た、真っ赤な世界が甦った。

燃える炎、焼け付く匂い、全身に纏わりつく不快な痛み。


もう二度とあんな光景を見なくて良いのなら、失明も悪くはないとさえ思った。


手と足は、ギブスで固定されているらしい。

どうりで動かないわけだ。


時折、覚醒する意識の中、聖夜は医師や看護士の会話を盗み聞きながら、自分の置かれた立場を次第に理解していった。