聖夜は、演奏を終えた美留久に渡すため、彼女のドレスに似合うペールピンクのガーベラの花束を花屋に注文していた。
勿論、それは聖夜のアイデアではなく、ジョセフィーヌの入れ知恵だったのだけれど。
『女は誰でも、ブーケを貰うと嬉しいものよ。
特に晴れの舞台では、なお更ね』
ジョセフィーヌは、真面目な顔で聖夜にそう言った。
『美留久ちゃんは、聖夜にとって大切な女の子だものね』
彼女はいつでも、お見通しだった。
二人が培ってきた関係も、聖夜の抱く不安も。
美留久を大切に思う聖夜の気持ちを、ジョセフィーヌは一番に理解していたのだ。



