あの日の朝、聖夜が目を開けると、時計はもう十時を指そうとしていた。



美留久を抱きしめたその感触が忘れられなくて、ドキドキして眠れなくて、気づいた時には、階下から自分の名を呼ぶジョセフィーヌの声が大きく響いていたのだ。

美留久の演奏する高学年の部は、正午から始まる予定だった。

実際、間に合わない程寝坊してしまった訳ではなかったのだが、兎に角、聖夜は慌てていた。



「たいへんだ、寝過ごした」



聖夜は転がるように階段を駆け下りると、また叫んだ。



「たいへんだ!」



聖夜のそんな慌て様を見て、ジョセフィーヌは、

「ブーケはパパに取ってきて貰いましょうね」

そう優しく言って聖夜を朝食の席に座らせた。