美留久は聖夜のキスにワクワクしていた。
何故って、美留久は聖夜が大好きだったし、今、自分のピアノを聴いてもらいたいのは聖夜、唯一人だったわけだから。
聖夜が弾くのを止めろと言えば、それだけで止める理由にだってなったのだ。
ちょっと駄々を捏ねて見せたのは、聖夜を待ちながら眠ってしまった自分が恥ずかしかったから。
知らない間に抱き上げられて、ベットに寝かされた自分にがっかりしたから。
(もう、やんなっちゃう)
でも、そのモヤモヤとした気持ちは、聖夜のキスでワクワクに変わってしまった。
(やっぱりセイが好き。大好き)
そう思うだけで、心が満たされた。
割れた爪なんて、どうでも良かった。
聖夜が傍にいるだけで、美留久の心は満たされていた。



