そんな話を美留久にしたら、「馬鹿ね」と一言呟いて彼女はこう言ったのだ。
「ないなりゃ、作ればいいじゃない」
聖夜には、小さな美留久が大きく見えた。
「でも……、作り方わからないよ……」
戸惑う聖夜に美留久は追いうちをかけるように言った。
「図書館で調べればいいのよ。
膳は急げよ。
セイ、行こう!」
美留久の行動力は抜群だった。
即刻、自転車の二人乗りで街の図書館まで乗り付けて、美留久はリファレンスの女性にはっきりとした口調で目的を告げた。
「飛び切り美味しいクロワッサンの作り方が載ってる本が必要なんです」



