「聖夜、お前が死んでも美留久ちゃんは喜びはしない。

お前は立って、歩いて、美留久ちゃんを支えるべきなんじゃないのか?

お前が受けたその何倍もの苦しみを、今、美留久ちゃんは乗り越えようとしている。

その未来に、お前が立ち会わなくて良いのか?」


(ミルク……)


声にならない、息が微かに漏れた。


なんという過酷な現実だろう。

あの悲惨な事故の暗闇の中から立ち上がった聖夜。

美留久に助けられた筈の命を、美留久の為に消そうとした聖夜。

聖夜は再び心の闇の中でもがき、這い出そうとしていた。

だか、今度は彼に寄り添う美留久は居ない。

聖夜はひとりでこの闇から抜け出さなくてはならないのだ。


聖夜の闇を生み出している原因を取り除かねば、と樹は思った。

自分にできるのはそれだけだと。


聖夜が美留久を遠ざけようとした、その原因を突き止めなければ二人は前に進めない、と樹は強く思ったのだ。