「ヘーイ、レッツエクストラアターック!」
「…………………………」
「ぐぼふぁっ!」

只今の状況を簡潔に説明しよう。
夏みかんが叫んで、いちごが後ろから突撃。その結果、私倒れる。
字面にするとかなり怪しげな状況。
私が背中を押さえていると夏みかんこと、高橋夏実がけらけらと笑った。

「おっはよーう! 元気かい? ハッピーしてる?」
「今間違いなくアンハッピーだぞコンチクショウ」
「…………おは」

いちご、葛原市子が小さく挨拶する。
朝からこいつらに襲撃を受けるなんて、不運すぎないか私。
いい加減大人になれ、そう告げた。

「……………………」
「……………………」
「おいそこ、目で会話すんな」

夏みかんといちごは、従姉妹である。
いや、従姉妹だからって目で会話できるもんじゃないだろうけど。
これがまあ、見事に二人共似ているのだ。姉妹かってくらいに。
そこで二人は別々の容姿になった。
夏みかんがふわふわしたボブに、いちごが長い三つ編み。
性格は意図していなかったようだが、見事に正反対になった。

「あー、いつきんや」
「なんだ腐れ蜜柑」
「…………後輩、里香、話してる」

視線の先には、里香と汚物。
何ということだ。楽しそうに談笑している。
私は今すぐに地を蹴り上げて、そこへ向かおうとする。
しかし、それはいちごに止められた。

「何すっ」
「…………めっ」
「いっこの言う通りだよ。恋の芽を摘んだら駄目だよう」

それなら私は犯罪の芽を摘みに行くんだ。
絶対、里香を振って不幸のどん底に陥れるつもりなんだ。
そんなことさせるか!

「…………里香に近付くなゴキブリ野郎!」