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そして戦争は未だ続く。
五時限目の体育ではしっかり気付かないようにして。
六時限目の移動教室ではちゃんと遠回りした。
過保護、そう言われたがここまでしないと奴は諦めない。

そして来ましたー。部活が。
里香は美術部で、私は吹奏楽部。
だから何かあった時どうにもならない唯一の時間だ。
それでもいちごがいるから安心できるけど。

トロンボーンを片手に、窓から下を眺める。
特に意味は無い。あえて言うなら、先生が来るかの確認だ。
すると私は、運悪く古賀の方を見つけてしまう。
古賀が、「東先輩は?」とか訊ねてきたから、窓を勢いよく閉めてやった。
里香に会わす訳ないだろ、馬鹿め。

「あ、いっちゃん。この子達教えといて」
先輩の指示に「はい」とだけ答える。
そうだ。私は先輩なんだ。
あんな奴に気をとられている場合じゃない。

…………って何で部活の時にまで男のこと考えてるんだ。しかもアイツ。
自分は馬鹿なのか。そうか馬鹿か。
あいつは悪い病原菌でも持ってるに違いない。
私は頭を切り替えて、後輩に指示を出した。





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