謳う者


「相変わらず何もない家だよなー」
リーゼの家は1階しかなく、生活に不自由がない最低限のものしか揃っていない。
「帰る場所があるのが嬉しいから十分だよ」
「…よくわかんないな~、」
「それに楽しみなら他にもあるから」
そういってリーゼは小さな本棚から1冊のノートを取り出した。
少し古びたノートには、リーゼの字で言葉が並べられていた。
エリックはこのノートの事を知っている。
村の中でも彼と…もう1人しか知らないだろう。
「今日はいい天気だから…」
羽ペンにインクをつけ、綴られる言葉。
書きながら口ずさむリーゼ。