久しぶりに拝んだ朝日を横目にして家への道を歩いていく。

いつもはどんよりと陰のある街道も、日が照らしているからなのか、俺が知っていたのよりずっと明るい表情をしている。

ただの細い木だと思っていた植物には淡い色の花が咲いているのに気付いた。

すれ違う人々も見かけない顔ばかりで。



…成る程、そりゃ新鮮にも感じるだろうよ。

初めて見て、今知ったのだから。

重力により、普段に比べて低い視界に気付いて、ふと思った。


…5年近く住んでいたというのに今更知るなんて、どういうことだろう。
自分は知らないのだ、何も。

……というより、知ろうともしていなかった。
興味もなかった。

…視野狭いな俺。
かなり自己中なんじゃん?


浮かんでくる自嘲の言葉に口角を歪める。


と同時に感じた、もう何度目かも分からない背中からの振動。

その主は当然というか、俺におぶられている彼女だ。

少女は未だにこの状態が落ち着かないらしく、ちょくちょく肩越しから俺の顔を伺っていた。


最初こそ、度々感じる視線に耐えきれず、振り返っていたのだが、その度に少女は亀の如く顔を引っ込める。

そのクセ暫くしたら、また覗き込んでくるのが可笑しい。


最終的に気にしない、フリをすることにした俺は不安げな視線を今も感じながら歩を進めた。