JUNKー衝動ー

俺は少女を抱えながら、アパートに向かって走った。

雨が降り、水溜まりが跳ね、服や靴の中まで濡らす。

水分を吸った服が重く纏わりついてきたが、俺には気にする余裕すら無く、ただただ急いだ。





いつもより長く感じられたアパートへの道のり。

やっとの思いでたどり着き、階段も駆け上がり、そして我が家の隣室のドアの前で立ち止まった。


―ドンドンッ

「おい、ヤナセいるのか?!」

両手が塞がっているため足でノックした。

文句を言われそうだが、仕方がない。


少し待ったが、ヤナセは出て来なかった。

いないのかと思ったが窓からは微かな灯りが漏れている。


寝ているのか、無視しやがったのか。


―ドンドンッ…ドカッ


「ヤナセ!!おい!開けろ、早く!!」
「…何なんだよ…」

どちらかは知らないが、イラッとしたのと焦りで、さっきよりも強く蹴ってやった。

その効果か、眠たそうで不機嫌なヤナセの声がドアのすぐ近くから聞こえた。


「…シンか?
テメェ、人ん家のドア蹴りやがって、今何時だと思って…」

「早く開けろ!!
怪我人だ!早くっ!」

「…はぁ?お前がか?
その割には随分元気そ」
「俺じゃねぇよ!!
道端で倒れてた、重傷だ!!早く!」


眠たいのを邪魔されたからなのか、本気で機嫌が悪いらしくヤナセの声はイライラを素直に出している。

イライラから来ただろうヤナセの勘違いを解こうと早口に説明する。


「…何?」


やっとこさヤナセがドアを開けた。


ドアの隙間から覗くヤナセの目が俺を見て、少女へと移る。




ヤナセの顔色が変わった。