ぽーっと脳内がピンク色に染まっているうちに、「よし、終わり」と久世玲人が消毒液を片付け始めた。

こっちはこんなに翻弄されているというのに、平然とした様子だ。

………まぁ、いいけど。


丁寧に手当てされたヒザを見て1人でニタニタと微笑んでいると、久世玲人は大きなアクビを一つしてベッドに向かっていた。


もしや…。


「……サボるの?」

「ああ、もちろん」

「もう…、ちゃんと授業出なよ。出席日数、危ないんでしょ?」

「大丈夫だって」


まったくもう…

全然聞き入れる様子がない久世玲人に、ため息が出そうになる。こういうところも、相変わらずだ。


はぁ…、じゃあ、私ももう授業に戻ろ…。


椅子から立ち上がり、それじゃ、と声をかけようとしたところで、久世玲人がこちらに振り向いた。


「どこ行くんだよ」

「どこって…、体育の授業に戻るんだけど…」

「また戻んの!?もう少しで授業終わるじゃねーか」

「うん、でもまだ時間あるし」

「………どんだけマジメなんだよ」


呆れたように久世玲人が呟く。


……ていうか、戻るのが普通だと思ってしまう私の思考はおかしいの…?

いやいやそんなはずは…、と考えていると、ベッドに座る久世玲人が「菜都」と、クイクイッとこちらに手招きしてきた。


「何?」

素直に近付くと、久世玲人はニヤリと不敵に微笑み、私の腰に腕を回してギュッと抱き付いた。