すったもんだとはこのことかもしれない。

結局、お互いちゃんと「好き」だったのに、変な勘違いや思い込みのせいで遠回りしたのだ。

……私の鈍感さが大半の原因だと久世玲人は言い切るけど。



あの日、私と久世玲人は、世間で言うところの「元サヤ」に戻った。

健司たち仲間は安堵したように喜び、春奈はやっぱりねと笑って祝福してくれた。佐山君も苦笑しながらも祝福してくれた、……と思う。


その他周囲の反応は予想通りというか…。

驚いている人や呆れている人、中には、はやし立てる男子や激しく落胆している女子もいた。

久しぶりに見かけたサエコにも、舌打ちされて睨まれた。

とにかく、しばらくの間は、また見世物かのように注目を集めてしまった。みんな、久世玲人の恋愛事情に敏感だ。


周りからは、ただ元に戻っただけだと思われているけど、今度は事情が違う。

私たちの関係性は、今までとはあきらかに違うものだった。それはきっと、2人にしか分からないかもしれない。

心の距離感というか、流れる空気というか。

見た目には何も変わらないけど、不安定でふらふらしていたものが、確かなものへと変わった。


気持ちが通じ合っているとは、なんとすごいことか。






「菜都、大丈夫か?」

「う、うん…、……イっ、イタイよっ!」

「我慢しろ」

擦りむいたヒザに、ぺタぺタと消毒液を塗られている。


体育の時間、グラウンドでドテッと思いっきり転んでしまい、それを見ていた久世玲人が保健室まで付き添ってくれたのだ。


「普通何もないところで転ぶか?」

「そ、そんなこと言われても…」

「ったく、どんくせえ」


…………時々、本当に気持ちが通じ合ってるのか疑うこともあるけれど。