「……一回しか言わねえから」


耳を掠める吐息。伝わる熱。

ドキドキしながら僅かにコクリと頷くと、久世玲人は私をさらにギュッと抱き寄せ耳元で囁いた。








「――――菜都、好きだ」



その瞬間、胸がきゅーっと掴まれた。

それと同時に、体中の血液がぶわっと沸騰して、逆流してしまいそうな勢い。


耳元で響くその声はとんでもなく甘く、脳内を駆け巡る。



………好き、って…、私のこと、好きって……!


言えとせがんだくせに、いざ聞くと、その威力は凄まじい。



「……これで、満足?」


真っ赤な顔して硬直する私に、久世玲人が憮然とした表情で声をかけてくる。

照れくさいのか、それとも夕陽のせいか、少しだけ耳が赤い気がする。




ウソじゃないんだ…

夢じゃないんだ…


これは、本当なんだ―――



「うぅ…」

「ちょっ…!!おいっ!何で泣くんだよっ!!」

「だっ…、だってっ…、う、嬉しくてっ…」

そう言うと、久世玲人は困ったように笑いながら、頬を伝う涙を拭ってくれた。


「もっ、もう一回っ…、」

「……一回しか言わねえって言ったろ」

「うー…」


そんなぁ、と眉をふにゃっと下げると、久世玲人は優しく笑いながら再び私の唇を塞いだ。

重ねるだけの、優しいキス。


言葉の代わりと伝えるかのように、何度もキスを降らせた。