「な、なに…」

突然のこの状況と久世玲人の様子に戸惑ってしまい、咄嗟に体が動かない。

な、何が起こってるの…?


怯えながら見上げると…、

「知りたいんだろ?俺が何考えてるか」

真っ直ぐと射抜くように見つめられ、不整脈みたいに胸が疼く。



「……ずっと考えてた。どうすれば菜都を忘れられるか」

「え…」

「でも、さっきから考えるのは、……何で菜都がここにいるのか。何で健司と一緒にいたのか」

「く、久世君…?」

「どうすれば菜都が俺のものになるか、どうすればここから離れないか、どうやって気を引こうか、そればっかり考えてる」

「…あ…あのっ…」


かあぁっ、と顔が熱くなる。


まるで、それはまるで―――


ためらいなく続けられる久世玲人の言葉に、心臓が跳ね上がり激しく鼓動を刻む。


「……菜都が求めてるのは俺じゃないって、菜都が選んだのはアイツって分かってても」

「…え?―――アイツって…」

「それでも、渡したくない。どうすれば奪えるか、……そればっかり考えてる」

「ま、待ってっ――」

「どうせ信じないだろうけど」

そう言うと、久世玲人は小さく息を吐いた。


「待ってよっ…!」

引っかかる言葉。身に覚えのない言葉。


「アイツって何っ…?私がアイツを選んだって何のことっ…」