「……全然だな」

「え……」

「あれだけ一緒にいたのに、やっぱり菜都は何も分かってなかったんだな」

そう言って久世玲人は、あざ笑うかのように小さな笑みを見せた。


「な、に…」

何も分かってなかったってどういうこと……

まるで、私の方に非があるかのような言い方。


「分かってなかったって、何がっ…」

「菜都に言ったこともウソじゃねえし、思いつきのキスでもない」

「え…」

「そりゃ、最初は俺の都合で無理やり彼女にしたのは認めるけど、でも、俺は菜都のことを本当の彼女だと思ってた」

「…………」


真っ直ぐ言い放たれた久世玲人の言葉に、心臓がドクンと揺れた。


本当の彼女だと思ってた…？

久世玲人は、そう思ってくれてたってことなのっ…？

―――だったら…、だったら何で…


「じゃあっ、何で別れたのっ……」

「それを望んでたのは菜都だろ」

「私っ…？」

「受け入れようとしなかったのは菜都だろ。だから、俺の言動がいちいち信用できねえんだろ？」


そうきっぱりと言い切る久世玲人に、違う、と伝えたいけど、首を振ることしかできない。


「……俺は菜都を求めたけど、菜都は違った」

「違った…？」

「菜都が求めてたのは、俺じゃなかった」





「―――だから、終わりにした」


久世玲人の声が、静かに響いた。