そこに理由なんてない。いつわりの関係にすぎないんだから。

分かっていたとはいえ、その事実を突きつけられたようで涙が溢れてくる。


「じゃあ、……ウソ、だったの…?」

「…ウソ?」

「ぜんぶ、ぜんぶ、ウソだったのっ…?」

「何言って――」

「俺から離れるなって言ったことも、菜都は俺のって言ったことも、全部ウソだったっ…?」

「ちょっと待っ――」

「抱き締めたこともっ…、キスしたこともっ…、全部理由なんてなかったっ…?ただの、思いつきっ…?」

「違うっ!」


涙目で訴える私の言葉を、久世玲人が苦しげな表情で否定する。


「だってっ…、理由もなく別れようと思ったんでしょっ…!?だったらっ、今までのことも全部っ、……何も意味なんてなかったんでしょっ…!?」

「違うって言ってんだろっ!」

「だったら何でっ!」


ポロポロと、涙が溢れて止まらない。拭うことすらできなくて、涙が頬を伝っていく。


「何でっ…、何であんなこと言ったのっ…?何で、あんなことしたのっ…?何で何も説明してくれないのっ…?」


「……………」


「分かんないよっ…言ってくれなきゃっ…」


震える声で絞り出すように訴えると、久世玲人は私を見つめながらゆっくりと口を開いた。