何の迷いもなく、健司は慣れた様子でオートロックを解除した。

そして、久世玲人の自宅がある階までスタスタ進み、まるで自分の家かのように玄関の鍵を開けている。


付いてくだけでいっぱいいっぱいだったけど……

ほ、ほんとに来ちゃったんだ…

どどどどうしよう…!


「ほらっ!」

足がすくんでなかなか動けない私を、健司が中へと引っ張り込む。


「ま、待ってよ…」

玄関でおろおろと戸惑っているけど、健司は待ってくれる様子もなく、さっさと靴を脱ぎ廊下へと足を進める。


ちょ、ちょっと待って…!

唯一の味方が早くも先に進み、どうしていいか分からない。

と、とりあえず靴、靴脱がなきゃ…

震える手でもたもたしながら靴を脱いでいると、いつの間にか健司は私を置いたまま部屋に入ってしまったようで、部屋の中から2人の会話が聞こえてきた。



「よお、玲人」

「……お前さ、勝手に上がってくんなって言ってんだろ」

健司に答える久世玲人の声が聞こえ、心臓がドクンと跳ねた。

カッチーンと体が固まる。

本当に、すぐそこに久世玲人がいるんだと、いやでも実感してしまう。


……私って、もしかして、もの凄いことしようとしてるんじゃ…?



冷や汗をかきながら焦っていると、また久世玲人の声が聞こえてきた。


「で?いきなり何なんだよ。用件がないならさっさと帰れ」

「まぁまぁ、怒るなって。今日は玲人にプレゼントを持ってきたんだって」

「……プレゼント?」



健司の楽しそうな声に、ギョッと目が見開いた。

もしかして、もしかして。


プレゼントって、……私のことじゃ…


心臓がイヤな音を立てた。