「ほ、ほんとに、大丈夫なの……?」


早くも目的地に到着し、目の前のマンションを見上げながら、ポツリと呟いた。

ここに来るのは、あの日以来。そんなに前のことじゃないけど、ずい分昔のよう。

あの時よりも、今の方がかなり緊張している。


マンションを見上げたまま足が動かない私に、健司は「大丈夫、大丈夫」と、気楽に言ってのける。

……他人事だと思って…。


会う、とは言ったものの、まさか今日ここへ来るとは思わなかった。しかも、考える余裕もなく半ば強制的にここへ連れられてしまい、本当にどうしたらいいのか分からない。

どんな顔して会えばいいのか。

何を話したらいいのか。

しかも、健司もいるとはいえ、勝手に家に上がり込むなんて失礼極まりないんじゃ…。


ああぁ…どうしよう…

予想通り弱気になり、その場にへたり込みそうになるけど。


「なっちゃん、行くよー」

合鍵を持った健司が、のん気に声をかけてくる。


「け、健司君…、やっぱり日を改めたい…」

「ここまで来て何言ってんの?」


訴えてみるけど、もちろん聞き入れてくれるはずもなく、健司は私の腕を引きながらズンズンと進んでいく。


あぁ…着々とカウントダウンが始まってる…

やっぱり、早まったような気もするけど…。


でも、これくらいの行動力がないと、私の性格じゃ会いに行くことなんて絶対できなかった。


ある意味、心強い味方だと、健司に感謝しないといけないのかもしれない。