「分かった?原田さん」

久世玲人が通り過ぎたあと、佐山君が得意げに私に聞いてきた。


一体、何が分かったと言うんだろうか…

佐山君の意図が分からない…


「何なの…」

苦しくなっただけだった。

久世玲人の姿に体が震えてしまう。関係ない、って言われて胸が痛い。


怒られる方がまだ良かった。

責められる方がまだ良かった。


何も言われず、私の存在を無視するかのように通り過ぎただけ。本当に、関係ないんだと突きつけられただけだった。


泣きそうに俯いているけど、佐山君はまたしつこく聞いてきた。


「本当に、分からなかった?」

「だからっ、何が…」

「久世、僕が頭撫でたとき、あきらかに嫉妬してた。今にも殴りかかりそうで」

「そんなことっ…」

「何で気付かないかなー。見え見えなのに」


そんなこと言われても、何も分からない。

あんな目で見られて、何も考えられるはずがない。


「分かんないよ…」


ポツリと呟くと、佐山君は小さなため息を一つ吐き、「強情な2人だね」と苦笑した。