不可解すぎる佐山君の行動に思わず声を上げ、ぶんぶんと首を振った。


「な、何っ!?」

「言ったでしょ?ビックリしないでって」

「ビックリするよ!か、からかってるのっ!?」

「違う違う」

そう言いながらも、佐山君はクスクスと笑っている。

からかわれてるとしか思えない。


「も、もうっ!」

「まぁまぁ、原田さん後ろ見てみなよ」

うしろ…?

相変わらず小声のまま話し掛けてくる佐山君に怪訝に思いながらも、素直に振り返った。




「―――っ!!」


く、久世玲人…


そこには、健司たち仲間と一緒にこちらに向かってきている久世玲人がいた。

思わぬ人の姿に、全身が血の気を引くような感覚に陥り、体が固まる。


「ほら、分かりやすいでしょ?」

久世玲人を見ながら楽しげに呟く佐山君の声が聞こえてくるけど、それどころじゃない。

何が分かりやすいのか。

その顔は、あきらかに不快そうで、眉をひそめてこちらを睨みつけている。

怒っているのだけは、とても分かりやすいけど。


ひどく不機嫌そうなその表情に、思わずギュッと口を結んだ。

胸が苦しくて、痛い。

少しずつ近付いてくるその姿に、緊張が高まり、身構える。



「玲人、……いいのか?」

僅かに健司の声が聞こえてきたけど、久世玲人は「関係ない」と冷たい声で短く切った。


―――関係ない…


その言葉通り、久世玲人はそれ以上私たちに視線を向けることなく、スッとその横を通り過ぎただけだった。