私が望んでいた、平穏な生活。

何事もなく1日が始まり、何事もなく1日が終わっていく、平淡な毎日。

元に、戻っただけ―――…

願っていたことを、取り戻しただけ―――…

それなのに、どうしてこんなにも虚しくて、悲しいんだろう。

あれほど平穏な時間を求めていたのに、ちっとも嬉しくない。


やっぱりまだ、久世玲人を忘れるには時間が必要で…。

朝の登校時間やお昼休憩、放課後の帰り道。

いつの時間も、久世玲人と一緒に過ごした思い出が頭をよぎる。毎日、思い出してしまう。

その度に、あの強引な態度や力強い目を思い出して、余計に切なくなるのだ。


重症だなぁ…

でもそりゃそうだよね…こんな消化しきれてない終わり方…


今さら何を思っても仕方ないけど、どうしてあの時何も言えなかったんだろう。茫然自失だったとはいえ、自分の対応力のなさに笑いたくなる。

そして、今さらだけど…

久世玲人は一体どういうつもりだったんだろう。

気まぐれ程度に気に入られていたけど、それにしては時折いきすぎた言動があった。

それに、あの文化祭の日から態度が急変した様子にはやはり疑問が残る。


乱暴なキス、―――そして、突然の別れ。


何が久世玲人にあんな行動をさせたんだろう。


時間が経っても、やはり分からないことは一つも解決しなかった。