「絶対うまくいくって思ってたのになー」

そう不満そうな顔で言うのは春奈。

春奈は何故か私たちの関係に絶対的な自信を持っていただけに、報告した時は私よりも「えーっ!」と驚いていた。


「菜都、何で告白しなかったの?何で引き止めなかったの?」

「……できないよ…、頭真っ白だったし…、それに、もう関わらないって言われたんだよ?」

「関わらないって…。一体どうしちゃったのよ、久世君」

「知らない…飽きた、とか…?」

「……もしそれが本当なら、つくづく勝手な男ね。散々振り回したくせに」

「まぁ…何も言えなかった私も悪いし…」

「……もう、菜都ってば…」

やっぱり、まだ納得いかなそうな顔だけど、いつまでも元気のない私に、よしよし、と頭を撫でてくれる。


「でもさぁ。どう見ても、久世君、菜都のこと大好きだと思ったけど」

「……おもちゃ程度に気に入ってたんだよ」

春奈をはじめ、健司や泰造にも同じようなことを言われてきたけど…、実際、私も久世玲人の言動に勘違いしそうになったけど、それは違ったんだ。


「そうかなー。やっぱり、何か理由があったんじゃないの?だって、何も聞いてないんでしょ?」

「そうかもしれないけど…」

今さら、何ができようか。

私が未練がましく思っているだけで、久世玲人の中では、もう終わっていることだ。

この関係を解消したのは、久世玲人が決めたこと。

今さら理由を聞いて、また彼女になりたいと、言えるわけない。しかも、仮の。


「それに、……本当に一切喋ってないし」


学校には来ているけど、教室に入っても久世玲人は私の所に来ることはないし、挨拶でさえしない。

一切、会話をしていない。

目も合わせていない。


出会う前に戻ったかのように、私の存在は、久世玲人の視界の片隅にも入らなかった。