ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。


怒りや敵意ではない。

まるで、拒絶しているかのような視線。突き放されたような、そんな視線。

足が竦んで、動けない。

好きな人にこんな目を向けられ、普通でいられるはずがない。


恐くて、恐くて…

震えながら、自然と私の目には涙が溢れてきて。


「…久世、君っ…?」

なんで…、どうして……


分からずに、ただ突っ立っていると、久世玲人は私の肩を掴み、強引に引き寄せた。



「――――っ!!」


突然の、キス。


無理やり顔を上げられ、唇を押し付けるように。

噛み付くような、キス。


「やっ…!!」

喋る隙も与えないように、何度も唇を合わせてくる。そこに、いつもの優しさなんてなくて。

「やめっ…く、ぜ…くんっ…!!」

なんでっ…

頭が、ついていかない。佐山君のこともあったし、いろんなことが起こりすぎて、心のリミットを越えている。

今の私には、考えることができない。


でもっ…でもっ……こんなのはっ…


「……ぃやっ……やめてっ!!」

腕を張り、突き離すように久世玲人の体を押し退けた。