「ど、どうしたの…?」

なるべく平静を装いながら訊ねてみるけど、久世玲人は私を見据えたまま。


「いいから答えろ」

ゆっくり立ち上がり、鋭い視線を向けながらこちらに近付いてくる。


……な、に…?

この不穏な空気に、心臓が早鐘を打つ。何で怒らせているか分からなくて、不安がよぎる。


「どこで、何してた」

「え、と…だから、ジュースを、取りに…」

「それは分かってる。そのあと」

「そ、そのあとは…」


先ほどの、佐山君との時間を思い返した。

あまりにも心に強く刻み付けられたその時のことを思い出し、思わず、目の前の久世玲人から目をそらして俯いた。

言えるはずがない。

久世玲人がどんな反応を示すのか分からないけど、あまり良いことにはならない。そんな気がしていた。


「……は、春奈に会って、ちょっと話し込んでたの…」


咄嗟についた嘘。

上擦った声で、もしかしたら嘘だとバレているかもしれない。

ギュッと目を瞑りながら、次の言葉を待った。




「……そう」

しかし、予想に反して久世玲人から返ってきた言葉は、その一言だけ。


……納得、したの…?

その様子を確かめようと、恐る恐る顔を上げると、久世玲人は私を真っ直ぐ見下ろしていた。


とても、冷たい目で。