「な、何が…?」

戸惑いながら佐山君に聞いた。


「ほら、この前…。クラスの皆に噂されるようなことになっちゃって…」

「あ、いや…」

「あの時は別に何を言われても構わないって、勢いであんなことしちゃったけど…。あとから考えたら、原田さんのことも考えないで軽率だったなって…」

「そんなこと…」

「だから、これ以上噂されないように、あんまり話しかけないようにしてたんだけど…。なんだか原田さんとも気まずくなっちゃって」

そう言う佐山君の表情は、とても苦しそうで、辛そうで、聞いている私まで胸が苦しくなった。


「それでさ、……この前の話、聞きたいんだ」

「えっ…?あ、あの、それは…」

この前の話とは、私が告白を断ろうとした、あの時のこと。

ずっと話さなきゃって思ってたけど、今このタイミングで、しかも佐山君の方から言われて少し戸惑ってしまった。


「……話があるって言われて、なんとなく勘付いてたんだ」

「え…」

「できるなら、ずっと避けたかったけど、そうもいかないでしょ?……いい加減、ケリをつけないと」

「佐山君…」

「さぁ、いいよ?話して?」


えっ!?今、ここで!?

「あ、あの、…いくらなんでもここじゃ…」

廊下は文化祭の賑わいで人がいっぱい。仮装した人たちや小さな子どももたくさんいて、とても落ち着いて話せる雰囲気じゃない。

さすがにそれは佐山君も気付いたようで、「それもそうだね」とキョロキョロと周りを見ている。


「…じゃあ、ちょっと寄り道して行こうか」

そう言って、近くにあった使われていない教室に一緒に入った。