騒ぐ心を落ち着かせながら言われた場所に向かうと、ちょうど先生が車からジュースを降ろしているのが見えた。

あ、いたいた…。

早速取りに行こうと足を進めたけど、車の陰から現れたもう一人の姿を捉えたところで、その足はピタリと止まった。


……佐山君だ。

佐山君も手伝いに来てたの…?

微妙な気まずさから固い表情で突っ立っていると、佐山君がこちらに視線を向け私に気付いた。


「……原田さん」

その声に先生も気付き、「お、原田!ちょうどいい所にいた」と、ジュースが入っている袋を渡しに来た。

もちろん、先生は私たちの事情なんてこれっぽっちも知らない。

「佐山と一緒に持ってけ。あとよろしくー」

と、まるでラッキーだと言わんばかりの顔で、職員室に帰っていく。


……あぁ…2人きりはさらに気まずいかも…。

なんとなく佐山君の方を向けずにいると、その様子を察したのか、佐山君が遠慮がちに話しかけてきた。


「…それ、重いでしょ?僕が持ってくから、いいよ」

「えっ…いや、でも佐山君も持ってるし…」

「大丈夫だよ、これくらい」

「で、でもっ、…行く方向一緒だし、私が、持ってくよ…」

そう言ってぎこちない笑みを返すと、佐山君も「…そっか」と少しだけ笑った。


「……じゃあ、行こっか」

「う、うん…」

やっぱりまだ少しの気まずさを抱えながら、私たちは一緒に教室まで向かった。