大変な盛り上がりを見せているステージとは反対に、この教室はしんと静まりかえっていた。

……1位の久世玲人本人がいるというのに。


「……久世君、やっぱり1位だったね」

先ほどの問いに答えるタイミングを逃してしまい、なんとなく、1位になった話題に触れてみた。

「すごいね、今年も1位だなんて」

「興味ねえよ」

本当につまらなそうに言い捨てている。おめでとうと言う雰囲気でもない。




『昨年に引き続き、2年連続1位獲得!!さすが、不動ですねー!!』

『久世君、どこですかっ!?校内にいるなら出てきてくださーい!!』

『まさか今年も不在のまま表彰ですかねっ!?』


久世玲人を探す司会の声が聞こえてくるけど、本人はピクリとも動かない。他人事のように見下ろしているだけだ。

まるで、無感動。


「久世君、呼ばれてるよ?」

「行くわけねえだろ」


……だよね。


一切関心を示す様子がない。

しかし、私も人のことは言えず、あまり素直に喜ぶことができなかった。なんとなく久世玲人が1位になると予感していたけど…。

好きな人がこうして注目されるのは、やっぱり少し複雑だ。

私なんかがこうして一緒にいるなんて、おこがましく感じてしまう。身のほど知らずって。

よりによって、こんな厄介な人を好きになったなんて…。


はぁ、と小さく息を吐いていると、久世玲人は私が渡した缶コーヒーを相変わらず無表情のまま飲んでいた。


今、何を考えてるんだろう…。


その横顔を盗み見ているなか、外では『久世君!表彰式までに是非出てきてくださーい!それでは、次は女子部門へ―――…』と司会の声が響いていた。