ひゃああっ!!ど、どうしようっ!!

だ、抱き締められてるっ!!

こんな風に抱き締められるのは、部屋に行った日、あの時以来だ。

心臓がバクバクと騒ぎ出し、胸が苦しくてたまらない。恥ずかしくて、息をするのもやっとで、足にも力が入らない。

好きだと自覚しているぶん、今までとは比にならないくらい焦ってしまう。


「あ…あのっ…あのっ…」

「菜都が自分から着たわけじゃないって分かってるけど……いい気がしない」

「あのっ…久世君っ…」

「二度とあんな格好はするな。他の男の前で、ありえねえだろ」

もう、緊張しすぎて、何を言われているのかもよく理解できていない。

背に回る腕、密着する体に、心臓は爆発寸前。


もうムリ…もうムリ…

は、早く離れないと…おかしくなっちゃう…

好きだという自分の気持ちだけが、溢れ出てしまいそうになったその時。


突然、校庭から盛大な音楽が鳴り響いた。

地響きでもするんじゃないかというほど大きなその音に、久世玲人の気もそれたようで、腕の力を緩めながら「……何だ、うるせえ」と校庭の方を向いた。


な、何だろ…でも、助かった…

その隙に久世玲人の腕から抜け出した。


「おい、」

「き、着替えなきゃ!すぐ着替えるから!」

「………ったく」

久世玲人はまたため息を吐きながら、椅子にドカッと座り込んだ。


よかった…あの状態のままでいたら、私きっと…

久世玲人に身を委ねたかもしれない…

まだ、久世玲人の気持ちを確かめていないというのに…