「文化祭の手伝い?めんどくせえ。やるわけねえだろ」

予想通りの答えが返ってきた。


屋上で寝ていた久世玲人を起こし、早速聞いてみると、不機嫌そうに即効で断られた。


「つーか、文化祭なんて行く気もねえんだけど」

「え、休むの?」

「……は?菜都、出るつもりのか?」

「普通そうだと思うけど…」

久世玲人にとって、文化祭は休みに値する行事らしい。まったく、協調性のかけらもない。

どこまで自由なんだと呆れつつあると、久世玲人が小さく息を吐いた。


「しょうがねえ。じゃあ、行くか」

「……え?」

「だから、菜都が文化祭行くなら俺も行く」

……どういう意味か分からないけど、どんどん顔が赤くなっていく。

どうして?と聞きたいけど、緊張して聞くことができない。


心臓をバクバクさせる私をよそに、久世玲人は眠そうにふわぁっとあくびをしている。こっちは平静を装うのに必死なのに、気楽なものだ。



「文化祭って何すんだよ」

「何するって…。うちのクラスはカフェを出すの」

「カフェ?……それって、菜都も何かすんの?」

「うん、当日は飲み物を作るの」

「ふーん…」

「みんな役割があるんだよ。久世君も何かすればいいのに」

「あいつは?」


………あいつ?

話の流れが突然変わり、何のことか分からない。「あいつ?」と首を傾げながら聞き返すと、久世玲人は不機嫌そうに聞いてきた。


「菜都の隣の奴。あいつとは、仕事一緒になってないか?」



隣の席―――佐山君のことだ。