「停学は菜都のせいじゃねえから、もう泣くなって」

久世玲人は困り果てているけど、泣くなと言われるとますます涙が溢れてくる。


「ふえぇ…わ、私、先生に言うっ、…久世君はっ、悪くないって」

「いや、だから―――」

「そ、そうしたらっ、停学、取り消しにっ、なるかもしれないっ」

「あのな、別に俺は停学なんて痛くも痒くもねえから。取り消されたところで、嬉しくもなんともない。だから、菜都は余計なことするな。もう忘れろ」

「な、何でっ、余計って…、何でそんなこと言うのよぉ」


私のすることが、まるで迷惑みたいじゃない…

うえぇ、とまたもや涙が溢れると、「あーもう!」と久世玲人は頭を抱えながら、椅子からガタッと立ち上がった。


な、なに…?もしかして怒られる…?あきれて、帰れって言われる…?

グスグスと泣きながら、いろいろと考えた。

きっと、ぶさいくな泣き顔だろう。

めんどくさい女、って思われてる。


「ふぇ…っ…」

相変わらず困り顔の久世玲人を、涙目でぼんやりとしたまま見つめていた。


「菜都のために近寄らねえようにしてたけど、もうムリだ」

「近寄らないってっ…」


その言葉に胸がズキリと傷付き、また涙が出てくる。もう涙腺がゆるゆるだ。


「そんなことっ、思ってても、言わないで…」

「だから、そういう意味じゃねえって。言ったろ、歯止めが効かなくなるって」


久世玲人はそう言いながら小さく苦笑し、私が座っているソファに近付いてきた。