「あのね……停学のことなんだけど…」

「何?また説教?」

「い、いや、そうじゃなくて…あの…」

私がまだ呆れていると思っているのか、久世玲人は小さく苦笑する。

あの時は確かに、街で喧嘩だと聞いたから、「何してんのよっ」と一方的に責めてしまったけど…。

ちゃんと、確かめたい…。


「あの…、停学の理由…、街で喧嘩じゃなくて、私を助けてくれた時…、その時のことが原因だったの…?」


切り出した話の内容に、久世玲人の眉がピクリと動き、スッと鋭い眼差しに変わる。


「……それ、誰が?」

「誰っていうか…、その、噂で…」

こ、恐い…。

さっきまで穏やかだったのに、触れられたくないかのように眉を顰めている。


「……本当なの?」

「噂だろ。いちいち気にするな」

「でも、」

「街で絡まれて、喧嘩した。そう言ったろ」


私の言葉を遮って、ピシャリと言い切る。もうこの話題を終わらせたいといった感じだ。

その態度に、ますます確信を持ってしまう。

やっぱり、本当なのだと。


「久世君!本当のこと教えてよっ!」

「だから、何度も言ってるだろ。これ以上何が知りたい」

「だって…!」

「……るせぇな。いい加減にしろ。菜都には関係ない」


久世玲人は面倒くさそうにため息を吐きながら、鬱陶しそうに言い放った。