「お待たせ…!」

勢いよく玄関の扉を開けて外に出ると、久世玲人が壁に寄りかかって私を待っていた。

私に気付いてこちらに顔を向けるその表情は、昨日のような不機嫌さはなく、むしろ穏やかで…。

「菜都、髪ボサボサ」

と、可笑しそうに笑っている。




……あれ?

あれあれ?


久世玲人の姿を目にした途端、私の顔はみるみると赤面していく。


どうしてっ!?

熱く見つめられたわけでもなく、甘い台詞を言われたわけでもない。むしろ、ちょっと小馬鹿にされて笑われた。


それなのに、どうして赤くなるのっ!?ずっと考えていたからっ!?意識しすぎているとかっ!?

自分の変化に戸惑い、熱くなっていく頬を押さえながら思わず俯くと、久世玲人がこちらに近付いてくる気配を感じた。


「何でこんなに乱れてんの?」

そう言いながら、目の前に立った久世玲人は乱れているらしい私の髪に触れ、サラサラと梳き始めた。


「……っ!!」

その優しい手つきに、心臓が飛び出そうなほどドッキーンと高鳴り、激しく脈打っていく。


「あ、あのっ、ちょっと、久世君っ…」

手を離してくれないと、どうにかなってしまいそう…っ!!

自分でやる、と目で訴えてみるけど、その手は離れることなく、「何?」と間近に見下ろされた。


うっ…。


きゅうぅ、と胸が締め付けられる。

さらに真っ赤に顔は染まり、呼吸するのもままならないほど、胸がきゅうきゅうと痛む。


く、苦しい…。

どうしちゃったの、私…。何でこんなに、胸が苦しいの…。