「なんか、僕がいじめてるみたいだね。そんなつもりじゃなかったんだけどなぁ」

「そ、そんなことはっ…!」

可笑しそうに言う佐山君に、慌てて首を振って否定した。


ちゃんと対応できない私のせいでもある。

思えば、佐山君は真剣に告白してくれたというのに、私は何も答えることができなかった。

返事はあとでいい、って言われたけど、こういうことは早く答えた方がいいのでは…。そうしないと、佐山君に期待を持たせるだけだ…。


……だって、私は佐山君の想いを受け入れることができないんだから。


佐山君の告白は、まだちょっと信じられないけど、すごく嬉しかった。


だけど…。


だけど私は、曲がりなりにも久世玲人と付き合っているんだし…。


泰造に言われたような、「どちらかを選ぶ」という度胸なんてない。現状維持、それが私が出した答え。


早く、伝えなきゃダメだよね…。

どうにか勇気を振り絞って、佐山君に向いた。


「あの、佐山君…」

「何?どうしたの?」

「あ、あのね…、今日、言ってくれたことなんだけど…」

それだけで佐山君も勘付いたようで、朗らかな笑顔から、少し真剣な表情へと変わる。

真っ直ぐ見つめられるけど、その視線に怯まず、言葉を続けた。


「その…、佐山君が、私のことを……す、好きって言ってくれて、ビックリしたけど、すごく嬉しかった」

たどたどしく伝える私の言葉に、佐山君は「うん」と優しく微笑む。

それに胸がチクリと痛むけど、しっかりと佐山君の目を見つめた。


「だ、だけど……」


そして、心臓をバクバクさせながら、いよいよ本題に入ろうとしたその時、


「原田さん、ちょっと待って」


決意を固めた私の言葉を遮るように、佐山君がストップをかけてきた。