そんな私の様子を、久世玲人はじっと見下ろしてくる。

「菜都」

「ははははいっ」

「……誘ってんの?」

「なっ!!何言ってっ…!!」

誘ってるっ!?誘ってるって何っ!?

ギョギョッと慌てる私をよそに、久世玲人は変わらず真っ直ぐ私を見下ろしている。


「さ、誘ってないよっ!!何にも誘ってないっ!!」

ブンブンと首を振りながら力いっぱい否定すると、久世玲人はおかしそうに笑った。


「じゃあ何でそんな反応してんだよ。顔真っ赤」

「うっ…」

痛いところを突っ込まれ、何も言い訳できない。

バッ!と目をそらし顔を見られないように俯くと、久世玲人は「変な奴」と笑いながら、頭をポンと撫でてきた。


「あんまり、そういう顔見せないように。特に他の男の前では」

「は、はい!?」

……え、と…どういう意味…?



そんなやりとりをしているうちに、いつの間にかゴミ捨て場に到着。

久世玲人は持っていたゴミ袋をポイッと投げ捨て、再び私に向いた。


「よし、帰るぞ」

「う、うん…。あ、鞄、教室に取りに行かなきゃ…」

その瞬間、「また戻んのかよ」的な顔をする久世玲人に慌てて言った。


「すぐ取りに行って来ますっ」

「いや、一緒に行く」

「だ、大丈夫っ!寄り道しないでダッシュで行ってくるからっ!」

「おい、菜都…!」


ついて来ようとする久世玲人を「待ってて!」と押さえ、急いで校舎内に入って教室へ向かった。


少しの間でも、1人になって心を落ち着けないといけないっ!!じゃないと、いつまでもドキドキしっぱなしだっ!!

落ち着こうっ!落ち着くのよ、菜都っ!!