「菜都、掃除はもう終わったのか?いい加減待ちくたびれた。帰るぞ」

「あ、ま、待って…!ゴミがまだ…」

「ゴミ?」

そう言うと、久世玲人は私のすぐ横に転がっているゴミに目を向けた。


「ゴミがどうした?」

「え、だから、捨てに行かなきゃ…」

そう答えながら慌ててゴミを拾っていると、久世玲人は「菜都」と言いながらこちらにスタスタと近付いて来た。


「な、何…!?」

近付かれるとドッキーンと心臓が跳ね、体に緊張が走る。

いつにないドキドキ感にカチカチになりながら身構えていると、久世玲人は私の隣に立ち、スッとゴミを奪った。


「え…?」

「一緒に行く」

「ええっ!?」

「菜都を1人にするとすぐ他の奴にとられるから。……ほら、行くぞ」


そう言って、久世玲人はボサッと突っ立ている私の手を引きながら、スタスタと足を進める。

「あ、ちょっと…」

有無を言わせぬままずるずると引き摺られ、足がもつれそうになりながらも必死に付いて歩いた。


途中、チラリと泰造の方に振り返れば、ニタニタとあの笑みを返され、私の顔は再びカーッと赤くなったのだった。