久世玲人は何て言うんだろうか…。佐山君が私に告白をしたと知ったら。

「よかったじゃねえか」と、私を彼女の役目からあっさり解放するんだろうか…。



まるで、壁と一体化するかのように、ベタッと張り付いて考えていたその時。


「菜都…?」

怪しげに私を呼ぶ声が聞こえ、ピクリと体が反応した。


声がした方に顔を向けると、そこにいたのは、変な目で私を見てくる春奈。


「……春奈ぁ」

「こんなところで、……そんな格好で何してんの?」

春奈が怪しげに見てくるのは当然だ。誰が見ても私の行動は不可解だろう。


しかし、今の私はそんなこと気にする余裕もなく、春奈に縋るような視線を送った。今のこの状況を助けて欲しい。私一人じゃ解決できるはずもない。


「春奈ぁ…どうしよう…」

「何が?あ、ていうか久世君があんたを探してたわよ?」

「……え?」

「うちの教室まで乗り込んできて…すごい形相だったけど、菜都、何かしたの?」


……久世玲人が、私を探してた…?はて…?




………。




………ハッ!!


しまったぁっ!!お昼に屋上来いって言われてたんだっけ!!

佐山君の告白という強烈な出来事のせいで、すっかり頭から抜けてたっ!!


やばいっ!!!


慌ててポケットから携帯電話を取り出して見ると、そこには久世玲人からの不在着信が数件。


「ひいぃ…っ!!」

またやってしまったっ!!


火照っていた体が一瞬で冷め、今度は背中に寒気が走った。


そんな私の様子を見ていた春奈も察したようで、「……ご愁傷様」と、ポツリと呟いた。