そんな私の様子を佐山君も察してくれ、そっとしてくれるかと思いきや、予想に反し再び声をかけられた。


「…原田さん」

「………」

「原田さん、こっち向いて」


佐山君とは思えない力強いその口調に、少しだけ驚きながら顔を上げた。彼の纏う空気が、いつもと違う。鋭く、真剣な表情だ。


「……佐山君?」

「原田さん、今日お昼、時間ある?」

「ええと…お昼はちょっと…」

久世君と約束してる、と言おうとしたら、佐山君は私の言葉を待たず続けて言った。


「少しだけでいいから。話があるんだ」

「あ、えっと、うん…」

有無を言わせぬような佐山君の言葉に圧され、コクリと首が頷いた。


私の了承を確認すると、「…ありがとう」と佐山君は前に向き直り、どこか一点をずっと見つめていた。


く、空気が重い…。


私が予想する限り、佐山君の話とは、きっと昨日の保健室でのことだと思う。……それしかないだろう。


久世玲人と2人で何をしてたんだ、保健室で何やってんだ、と問い詰められる可能性が高い。


学級委員でマジメな佐山君からしたら、私(とついでに久世玲人)の行動が許されるべきものじゃないと。


クラスメイトの呆れた行動に、怒ってるんだと。