「あの、久世君、……もしかして」

久世玲人のシャツをくいくいっと引っ張りながら、恐る恐る問いかけた。


「ああ。アイツら、あのあと健司たちがシメといたから」

「……え?」

「もう菜都に手を出すことはねえだろ」


……またもや、驚愕。

シメたって……。

私の世界にはないフレーズに、あんぐりと口を開けて久世玲人を見てしまう。

アイツらっていうのは、私を襲おうとした連中だよね…?



「あれ?もしかして、なっちゃん絡みだったの?」

健司が「なぁんだ、それでか」と納得している様子だった。


そして、私がビビッていることに気付いたのか、「あはは、大丈夫だよ。俺らはそういうの、日常茶飯事だから」と平然と言ってのけた。


日常茶飯事って…。恐ろしい…。

聞かなかったことにしよう…。うん、そうしよう…。


頬をピクピク引きつらせながら久世玲人と健司に苦笑いを返した。


「菜都、また変な奴等に絡まれたらすぐに言え」

「う、うん…」

と返事をしたけど、迂闊に報告できないな、と悟った。




その後、私を襲った連中が2週間ほど学校に来なかった、いや、来れなかった、と聞き、改めて久世玲人を怒らせるとおそろしいと実感したのはまた別のお話――…。