いつわり彼氏は最強ヤンキー[完]

冷や汗を流しながら何も言えなくなると、久世玲人は抱き締める腕の力をギュウッと少し強くした。

今までと違って意識は飛ばしていないため、その力強い感触や肌の温もりがリアルに伝わる。


再びカーッと顔が赤くなったのが分かった。

不機嫌になった久世玲人を気にするより、まずはこの状況をなんとかしないと、私の心がもたない。


「あ、あの…!ちょっと…」

何度か身を捩るけど、久世玲人は鋭い表情のまま口を開いた。


「アイツのこと、気になるのか?」

「えっ…、き、気になるっていうか…」

「菜都からアイツの名前聞くと、すげえ気分悪ぃ…」


そ、そんなに気分を悪くするほど、佐山君が何かしたんだろうか…。いや、でも佐山君は優等生タイプだから揉め事は避けそうだし…。


「な、何か、あったの…?」

恐れながらも勇気を出して聞くと、久世玲人はさらにムッと機嫌を悪くする。


「アイツのことは一切考えるな。頭から排除しろ」

「は…!?」

排除っ!?

そんなに嫌いなのっ!?佐山君のこと嫌いなんだろうとは思ってたけど、そこまでっ!?


「な、何で…?」

おずおずと見上げながら言うと、久世玲人は不機嫌なまま「俺が嫌だから」と何気に俺様発言をかまして私を見据えた。


「嫌なんだよ。菜都が他の男のこと考えるのが」

「え…」

「菜都の彼氏は、俺。他の男なんてどうでもいいだろ」


そう言いながら、腕の中で固まっている私の首筋をゆっくり撫でながら、一ヶ所にチュッ…と優しく口付けた。