「ひっ…!!」

驚きで体がピキィッと固まった。


久世玲人の引き締まった腕が背中に回り、首元に顔をうずめられる。

今日、何度目かの抱擁。ただ、保健室の時のような力強さはなく、優しく、包み込まれるように抱き締められ、体中をゾクゾクとした何かが走る。


な、何でまた、抱き締められてるのっ……

なんで…なんで…


いや、それよりも…お、襲うって…!!


「やっ…!!」

恥ずかしさと危機感から思わず声を上げながら身を捩ると、久世玲人が耳元で小さく笑った。


「冗談。襲わねえよ、今は。……あんなことあったばっかだし」


しかし、冗談と言う割には抱き締める腕を離してくれない。

それに、「今は」っていうのが妙に引っかかったけど、恐くて問い詰めることもできない。



どうしてこんなことに…!!もうムリっ!!恥ずかしすぎるっ!!



「あ、あの…あの、く、久世君…」

「ああ?」

「は、離して、く、ください…」


なんとか離してもらおうと、たどたどしくも必死に訴えかけると、久世玲人は少しだけ腕を緩めた。

そして、私を見つめながら口を開く。


「ムリ」


……へ?


あっさりと一言で片付けられ、呆気にとられてしまった。

予想外の言葉に、ポカンと久世玲人の顔を見つめてしまう。


ム、ムリって言われた…?え、なんで…。