許容範囲を大きく超えたその行動に、抵抗するという考えも浮かばず、ただ見入ってしまった。

私の脳みそじゃ、対応できるはずがない。

まるで他人事のように、呆然と、その様子を見ることしかできなかった。



「……痛かったか?」

久世玲人はそう問いかけながら、反対の手首もとり、同じように口付けている。


慈しむかのように優しく触れる唇は、まるで、先ほどの痛みを消してくれているように思えた。



「……菜都?」

何の反応も見せず、ただボーっと自分の手首を見つめている私に、久世玲人が声をかけてくる。


しかし、今の私はそんな声など届いていない。



「おい、菜都?」

「………」

「おい」


久世玲人が呼びかけているみたいだけど、反応できない。

そんな腑抜け状態の私に久世玲人も諦めたのか、呼びかけることもやめ、ゆるゆると手を離して私の体を反転させた。


そして、今度はお腹に腕をまわしてきたかと思ったら、そのまま後ろに引き寄せられた。