「よかった…」

「へっ!?」

「菜都が何かされてたら、マジでどうしようかと…」

「な、何もされてないからっ!!」


だから離してっ!!恥ずかしすぎるっ!!


そう願うけど、体は固まったまま思うように動かない。

きっと、今の私は真っ赤な顔になっている。

ドッドッドッ…と心臓は激しく高鳴り、全身の血液が沸騰してるんじゃないかってくらい、体内が騒がしい。

お腹が鳴ってしまったらどうしようかとか、そんなどうでもいいことまで考えてしまう始末。


「久世君、だ、大丈夫だから!ねっ!?……離して?」

なんとか離れてもらおうと必死に声をかけてみるけど、そんな私の言葉は届いていない。


抱き付いたまま、久世玲人はもう一度私の手を取り、じっと手首を見つめてきた。


「な、何…!?」

今度は何をするっての!?

ビクビクと身構えていると、久世玲人は眉を寄せ、手首を見つめたまま呟いた。


「赤くなってんじゃねえか…」

「え!?そ、そう!?」

自分でも気付かなかったけど、きっと、あの連中に強く掴まれていたから跡が残ったんだろう。

でも、傷が付いたわけじゃないし、こんなのどうってことない!!


「へ、平気だよっ!」

離してもらおうと手を引っ込めようとするけど、久世玲人はそれを許さない。


しばらく手首を見つめていたかと思えば、なんと、その赤くなっている部分にチュ…と唇を落としてきた。