昨日、部活動結成式で吹奏楽部への正式入部が決定し、
吹奏楽部員となった。
さっそく今日から活動開始というので、
放課後に音楽室へ向かった。
音楽室に近づくと、クラリネットのアンサンブルの音に混じって、
トランペットのファンファーレや、フルートの音が聞こえてきた。
まだ、全体の活動が始まっている様子ではない。
楽しそうな話し声が聞こえてきたりする。
「優希・・・あ、よかった、遅れてないみたい」
「芽依遅いよ!来ないかと思っちゃった!」
音楽室に顔を出すと、小学校の頃からの親友、
小澤優希が嬉しそうに笑顔を輝かせた。
「希望楽器、決まった?」
「んー、まだハッキリ決まってはないけど、クラリネットかな」
部活動の仮入部の時に、少しだけど、クラリネットを吹かせてもらった。
何とも間抜けな音しか出なかったが、結構楽しかったのを覚えている。
「あっ、私も!運命感じちゃうね!」
「優希もなんだ。もし一緒だったら、よろしくね」
そう言って、握手する為に手を差し出したときだった。
―――ガラッ
「活動、始めるぞ」
扉の開く音と共に入ってきた、冷徹極まりない、低い声の持ち主。
それは、紛れもなく、私に〝覚悟しとけよ〟とその冷たい声で言い、衝撃を与えた人物だった。
「一年生の皆さん、この吹奏楽部の顧問をやっている、加藤弘司だ」
まるで感情の無い、機械の様な声だった。
当然一年生達は、この冷血教師を目の前に、どう受け入れればいいのか、困惑している。
「この吹奏楽部は、毎年全国大会に出場しているレベルの部だ。そこらへんの運動部と一緒にされたら困る。友達が入るからとか、運動が嫌だとか、そんな理由で入ってきた者は、今すぐ出て行け。以上。」
そう言うなり、その冷血教師は音楽室から出て行った。
「マジかよ」
私の通う桜ノ宮中学校の吹奏楽部は、噂で〝とにかくスゲェ〟所だと言うのは、既に聞いていた。
だが、何なんだこれは?
部活より前に、顧問がスゲェんじゃないか?
―――しかし、まだ私は知らない。
この教師、加藤先生との出会いが、
後に私の運命を、大きく変えてしまうことを。